前熟考期の心理的アプローチ

Heart

これは受診の意識がまだ芽生えていない段階の、特に高齢者の人たちに、物語と絵の共感力で関心を引き出し、行動変容をやさしく後押しする心理的支援ツールです。

本絵本は、4つの物語で構成されており、それらの物語性と視覚的な訴求力を活かし、患者のヘルスリテラシー(健康情報の理解力と活用能力)を高めることを目的としています。とくに、受診の必要性をまだ自覚していない、いわゆる「前熟考期〜熟考期」にある対象者に対して有効とされる心理的アプローチを意識して構成されています。

ストーリーに共感を呼ぶ場面や、視覚的に安心感を与える絵の力を通じて、受診行動に対する抵抗感(心理的バリア)を軽減し、「病院に行こう」という自然な行動変容を促します。これは、行動変容ステージモデルの理論に基づくものであり、情報提供型の啓発よりも、患者自身の内的動機づけを重視したアプローチです。

推薦のことば 

この本はハート先生こと市田 聡先生が心を込めて手掛けられた心臓病からの再生の絵本です。

先生は医療現場に優しい教育を手掛けてこられました。

今回はそこに留まらず、患者さんと家族に向けた医療の絵本という最新分野に挑戦されました。

 この絵本には、医師の言葉では伝えきれない心の綾ともいうべき再生の物語があります。

 心臓病に罹患すると、本人の体、気持ちだけでなく、人生や家族の在り方にも大きく影響します。この部分に優しく、そして確実に届くメッセージを絵本で表現されました。

 余り患者さんには馴染みのない”心臓リハビリ“という医療で再生力を生み出す方法に気づく本です。

すなわちこの心臓リハビリという“もう一度歩き出す力”を生み出すのは、回復への確かな道なのです。

  この本は、四つの小さな物語を通して、患者さんとその家族が心を通わせ、再び未来を見つめ直す姿を描いています。

―誰かの気づきが命を救う― まさにその言葉どおりの一冊です。

 現場で長く医療をされてきた市田先生ならではの発想と温かさの籠ったこの本を、医療の現場でも、家庭でも、そっと寄り添うように読まれてほしい絵本だと確信しここに推薦するものです。

野原隆司

京都大学臨床教授、枚方公済病院顧問

高の原中央病院名誉院長

日本心臓リハビリテーション学会 名誉会員

○第一話 二人で超えた、命の峠
果樹園を営む夫婦。倒れた夫を支え、心臓リハビリで回復を目指す。寄り添う想いと医療の力が命を救う話。

○第二話 小さな気づきが未来をひらいた
孫のひとことが、祖父の心臓病の早期発見へ。家族の気づきが、命をつなぎ未来を照らすきっかけとなる。

○第三話 脈打つ命のレストラン
胸の異変を見抜いたのは、寡黙な新人厨房スタッフ。実は看護師の資格を持っていた。その彼が、過去を乗り越えた、まなざしが命を守った。

○第四話 命を照らす 音の花束
心不全の母に唱歌の絵本を届けた娘。歌が記憶を呼び覚まし、涙と笑顔が病室に広がる奇跡の瞬間。