WPW症候群
WPW症候群(Wolf-Parkinson-White syndrome)とは、Kent束と呼ばれる副伝導路が存在する疾患で、Kent束は、右房-右室あるいは左房-左室に存在するタイプがあり、稀に心室中隔に向かう場合もあります。
Kent束の存在部位が右房-右室の場合には、右室が早期に興奮するために、興奮の伝わり方は、右室が先で左室が後となり、心電図波形は左脚ブロック型を示します。これに対して、左房-左室間に存在する場合、左室が早期に興奮するため、興奮の伝わり方は、左室が先で右室が後となり、そのため心電図波形は右脚ブロック型を示します。
この特徴に加えて、WPW症候群では、心室が早期に興奮することでデルタ(Δ)波と呼ばれる特有の波形が心電図のP波の後に現われます。これが脚ブロックとの違いの部分でもあります。ただし、このデルタ波は、心電図波形を、注意深く観察しないと見落としてしまうことがあり、特にモニター波形では判別が困難であるため、疑わしい場合には必ず12誘導心電図を記録して判定します。
WPW症候群は、心臓突然死の原因の一つと考えられており重要です。特に危険性の高いWPW症候群として、心房頻拍や心房細動、心房粗動などの頻拍性不整脈が発生すると、頻繁な興奮がKent束を通り、頻拍として心室に伝導され心室性頻脈または心室細動を引き起こす可能性があります(pseudo VT; 偽性心室頻拍)。このような例に対しては、カテーテル焼灼法により副伝導路を断つ治療が行われます。
WPW A type
WPW A typeでは、Kent束が左房-左室間に存在する。
WPW B type
WPW B typeでは、Kent束が右房-右室間に存在する。
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