Spontaneous Resonance-Based Music Therapy
SING-HEART Study(Singing Intervention for the Gentle Heart)
高齢心不全患者の中には、認知機能の低下や情緒不安、せん妄傾向を有する例も多く、特に運動を伴う心臓リハビリが実施困難な超高齢者(80~90代)では、非薬物的アプローチが求められています。
この度、私たちが制作しました「唱歌と絵を用いた絵本」は、懐旧的な情動を喚起し、回想法・音楽療法の側面を併せ持ち、心の癒しと認知・感情機能の改善が期待されます。
この唱歌絵本は、明治・大正時代の懐かしい唱歌と、柔らかな挿絵を組み合わせたもので、既に数例で、表情の改善・自発的な発語・せん妄の軽減といった効果が観察されています。
ここで使用します絵本型での音楽提供という方法では、以下のような特徴があります。
【絵本型・自発共鳴型音楽療法の特徴と効果】
1. 自発性を重視する点で「能動的音楽療法」に近い
従来の音楽療法(受動型)は、
- 音楽療法士が演奏・再生
- 患者は聞き手として参加という形でした。
一方、本法では、
- 唱歌と絵を「静かに見る・感じる」
- 誰に言われたわけでもなく「ふと歌いたくなる」「思い出す」という内発的な感情・記憶の喚起が起こります。
これは「自己決定的な行動」であり、心理学的にも「内的動機づけによる情緒反応」はより深く、持続的な効果をもたらすと考えられます。
2. 視覚×聴覚×記憶の統合刺激による「回想の全人的効果」
- 絵本の挿絵は、記憶の情景を視覚的に再構築させ
- 歌は、聴覚とリズムで「懐かしさ」と感情を呼び起こし
- 歌詞が意味内容を伴うことで、認知・言語の活性も促します
→結果として、言語・感情・運動(歌唱)・記憶中枢が一斉に活性化し、
短期的には表情・気分改善、中長期的には生活意欲や交流意欲の回復に繋がります。
3. 「ひとりの時間」「個別空間」で行える心理的安全性
- 集団の場では萎縮してしまう人
- 声が出にくいことを恥ずかしく思う人
- 人前では泣けない・感情を抑えてしまう人
このようい、本プロジェクトは、音楽療法+回想療法+箱庭療法的効果とも言え、
非常に優しい形での情緒支援となっています。
今後、病院、診療所、在宅施設など多様な現場でこの方法を検証し、心不全患者のQOL向上に貢献する新たな補助療法の可能性を探ることを計画しています。
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